ACKが主催するACK Curatesでは、フェアディレクターが毎年異なるテーマを提示し、国立京都国際会館のイベントホールおよびその周辺にて開催されるパブリックプログラム展示、トークイベント、キッズプログラムといった、あらゆる方に向けたプログラムを開催します。

ACK Curates 2025 テーマ

「2050 ー未来へのまなざしー」

 
あなたが思い描く2050年はどのような世界でしょうか?

人工知能の発展に伴い、様々な労働が自動化し、それらがアート作品を作ることもあり得ます。あるいは、人類が月や他の星に移住し、新しい文化が芽生えているかもしれません。
未来は、私たちが生きる時間の積み重ねから作り出されます。つまり、私たちが未来を考える時には、同時に、過去を振り返ることが大切なのです。

「2050 ー未来へのまなざしー」というテーマに、3つの想いを込めました。

1つ目は、「平等性と差異の認識/Equality and Disparity」です。
ACKを通じて様々な国や地域を旅していると、様々な差異を感じます。居住する地域によって、2025年は全く異なる見え方になるのです。例えば、ヨーロッパでは、人々の間に地政学的な緊張感が漂い、アートや文化への危機感が懸念されています。一方、経済成長が著しく進む東南アジアでは、アートに対する期待と熱量に圧倒されるばかり。本来であれば、生活環境により異なる思想、意見を持つのは当たり前のこと。しかし未知に対する恐怖が高まった時、その差異は私たちを分断へと導くことになります。人々が多様性を保ちつつ共存し、レジリエンスを保つためには、差異を認識し、対話によってお互いの異なる部分を補完し合うことが重要です。ACKでは、そのきっかけとなる交流の場を創出します。

2つ目は、「長期的な時間認識/Scale Changer」です。
芸術の特徴の一つに、50年、100年先まで遺る、あるいは未来へ遺すことを前提につくることが挙げられます。アーティストの素材選びや作品に込めるものは、未来へとつながっているのです。芸術作品に潜む長い時間軸を感じることは、現在のあり方や時間の過ごし方を見直すきっかけとなるでしょう。また、芸術との出会いを今だけのものとせず、長い視野で捉えることで、ACKという場から新しい文化が生まれてゆくことを期待します。

3つ目は「コラボレーティブ・インテリジェンス/Collaborative Intelligence」です。
現代社会の加速度的な技術革新は、私たちの生活を豊かにしました。一方で、それらは気候危機や経済や環境格差などの社会問題をも同時に生み出しました。過度な進歩主義やそれに対するアンチテーゼとしての保守が台頭する未来はディストピアにもなりかねません。そうしたなか、分野や地域を横断した「多元的なまなざし」が、ますます重要になってきます。力を持つ誰かひとりが台頭するのではなく、多種多様な人々が関わり、異なる知恵を共有し、助け合い、多元的な視座でものごとをとらえることが、より一層強固な未来をもたらすのではないでしょうか。

京都は、古都として風情を色濃く残し、伝統文化が今でも生きる世界でも稀有な都でありながら、日本で初めて博覧会が開催されるなど、新しいものを積極的に受け入れてきました。また、歴史ある土地だからこそ、それらを支える技術の継承や発展においても、様々な工夫が施されています。それを支えているのが、昔からあるご近所付き合いや、人と人との生きた交流です。過去と未来が共存し、未来の技術が伝統を守っている京都だからこそ、古き良きものと新しいものとが調和し、時間や分野を超えたコラボレーションが可能になるのです。ACKの展示構成にも、そうした京都の街に息づく心意気が込められています。

ACKは、私たちが次の25年をどのように生き、どのような社会を目指してゆくのかを多元的な視座から考え、未来を可視化(ヴィジュアライズ)するきっかけを作ります。そしてACKが分野を超えた様々なコラボレーションの通過点として、これから続く未来への出発点として、新しい文化の生まれる場となることを願っています。


ACK フェアディレクター 山下有佳子

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