KM11
YUMEKOUBOU GALLERY
(京都)
展覧会タイトル「Umwelt」
「Umwelt」とはドイツの生物学者ユクスキュルが提唱した概念であり、「環世界」と訳される。
「環境」はある主体の周りに存在し、それを取り囲んでいるもののことを指すが、「環世界」は主体が周りに意味を与えながら構築した世界のことだという。
人間が見ている世界はほんの一部に過ぎなくて、それぞれの生物が自然の摂理に従いながら種特有の環世界をもち、生きている。
当然のことのようだが普段はあまりこの事を意識することはない。
私は鳥の声を聞いた時、虫の死骸を見つけた時、ある一場面に遭遇した時、その事に気づく瞬間がある。
そしてその世界に引き込まれる。
生物が知覚している世界は其々に異なり、構築した世界にはその主体にしか見えないものや感じないものがある。
例えば、紫外線は人間には見えないが、蝶には見える。ダニは視覚や聴覚はないが、嗅覚や温度感覚が優れている。
私の興味は、生物が作り出す巣や営み、生死にある。
巣作りをする時、或る生物は本能的に素材を選び、自らの遺伝情報を頼りに形を生み出す。
時に人間にとっては不必要とされるものが、或る主体にとっては生存に必要なものであったりする。
主体であるどんな生物もそれ自身が中心を成し、意味を与えながら構築した独自の世界に生きている。
この営みや生命の糸がどのようにして途切れる事なく連綿と続いてきたのかを探り、生物の成り立ちを辿ることで世界をどう見て、知覚、認識していくかを考えたい。
ドローイングによって部分的に抽出した営みの形象を陶立体へと変換し、再構築していく中で一つ一つに物語を込めていく。
そういう風に作品を制作していく中で私自身の知覚している世界を広げながら人間も広大な世界を構成する一部なのだということを認識すると同時に自らの五感を使って様々な事象を知覚していきたい。
Gallery Information
YUMEKOUBOU GALLERYは、京都祇園・新門前通りの白川のほとりの静かな場所にあります。
所属作家である四代田辺竹雲斎によって制作された竹のインスタレーション「守の門」をくぐった先にある、築150年以上の歴史がある京都らしさを感じる建物がギャラリーになります。
古美術の優品と現代作家の作品をともに展示するなど、新たな価値の創造、発信をしています。